評価★★★☆☆
最後まで読み終わった時、鳥肌がたった。
犯行時刻の記憶を失った死刑囚。その冤罪を晴らすべく、刑務官・南郷は、前科を背負った青年・三上と共に調査を始める。だが手掛かりは、死刑囚の脳裏に甦った「階段」の記憶のみ。処刑までに残された時間はわずかしかない。二人は、無実の男の命を救うことができるのか。江戸川乱歩賞史上に燦然と輝く傑作長編。
読み始めてしばらくは「ミスリードが露骨だな」と思った。
ところが、読んでいくうちに気付かないままミスリードされてて、何が真実で何が嘘なのか分からなくなった。
後半になり、一気にスピードアップし、ドキドキしながら最後まで突っ切った。
はっとなったのは以下の部分。
神父は頷き、跪いた死刑囚の前に進み出た。そして祭壇の十字架を背にし、厳かな口調で言った。「あなたの生涯の罪、全能の神に背いたことを悔いますか」
「はい」
「われは、汝の罪を赦します」
その神の言葉を聞いて、南郷は頭を殴られるような思いだった。一六〇番の犯した罪を、神は赦したが人間は赦さない。
法が人を裁くとはいっても、死刑を決定し、実行するのは生身の人間である。
テレビでひどい事件が報道されると、凶悪犯には死刑を、と思うが、死刑は一人の人間の命を奪う行為だということを、日常生活していると忘れがちになる。
死刑囚は遠い存在だ。
ミステリーながら、死刑制度という社会性の高いテーマが柱に据えられており、冤罪や犯罪者の社会復帰について考えさせられる。