評価★★★☆☆
あらすじ
北関東新聞の記者・悠木は、同僚の安西と谷川岳衝立岩に登る予定だったが、御巣鷹山の日航機墜落事故発生で約束を果たせなくなる。一方、1人で山に向かったはずの安西は、なぜか歓楽街でクモ膜下出血で倒れ、病院でも意識は戻らぬままであった。地方新聞を直撃した未曾有の大事故の中、全権デスクとなった悠木は上司と後輩記者の間で翻弄されながら、安西が何をしていたのかを知る――。実際に事故を取材した記者時代の体験を生かし、濃密な数日間を描き切った、著者の新境地とも言うべき力作。
感想
単なる山登りの話かと思っていたが、違った。
どちらかと言えば、日航機墜落事故がメインのテーマ。
主人公が新聞記者として日航機墜落事故の全権をとった17年前と、山登り仲間の息子・燐太郎と衝立岩に挑戦する現在が、交互に描かれる。
地方紙にとってもらい事故であると共に、滅多にない超度級の大事故でもある日航機墜落事故。
悠木は全権デスクとして、現場記者に指示を出し、紙面を決め、決断を下す。
後輩記者の扱いに困り、同期と対立し、販売や広告とやり合い、上司に憤りを感じ、自身に悩む。
忙しない、情熱が燃え上がる、怒濤の日々。
仕事に没頭する中で、家族の問題が持ち上がる。
この言葉が印象に残った。
安西の言葉は今も耳にある。だが、下りに過ごす人生だって捨てたものではないと思う。生まれてから死ぬまで懸命に走り続ける。転んでも、傷ついても、たとえ敗北を喫しようとも、また立ち上がり走り続ける。人の幸せとは、案外そんな道々出会うものではないだろろうか。クライマーズ・ハイ。一心に上を見上げ、協目も振らずにただひたすら登り続ける。そんな一生を送れたらいいと思うようになった。