評価★★☆☆☆
あらすじ
他の星から流れ着いた《妖精》は従順で遠慮深く、なぐさめ上手でほめ上手、ペットとしては最適だった。半官半民の配給会社もでき、たちまち普及した。しかし、会社がその使命を終え、社史編集の仕事を残すだけとなった時、過去の記録を調べていた老社員の頭を一つの疑惑がよぎった……諷刺と戦慄の表題作など、ショート・ショートの傑作35編を収録した夢と笑いの楽しい宝石箱。
感想
星新一氏の生前に出版されたショート・ショート集の中で、これだけ読んでいなかった。
たまたま立ち寄った古本屋で見かけ、即購入。
初出は昭和39年なのだが、スマートな文章で時代を感じさせない。
かといって、素っ気ないわけではなく、このような詩的な表現もある。
夜の雨は暗黒のなかから限りなくわき出し、フロントガラスに勢いよく飛びかかってくる。そして一瞬、街灯の光を乱反射して黄色く輝く。だが、左右にゆれるワイパーによって、たちまちのうちに消し去られてしまう。
水滴のぶつかりかたの強いのは、そとが嵐であるためではなかった。自動車の速力のせいだった。くさりを断ち切った獣、急流に浮かぶ枯葉のように、全速力を出していた。
初期の作品集だからか、星さんにしては珍しく、張やウォルサムなどの名前が主人公についている。
「沈黙の時代」「おみやげを持って」でオチが読めてしまったのが残念だった。
小学生の頃のように、純粋な気持ちで夢中になって読むことはできなかった。
どうしてだか分からない。
自分の何が変わったんだろう。
この作品が執筆されたのは昭和37、8年ごろ。
ガガーリン少佐の乗った初の人間衛星の大気圏外飛行が昭和三十六年。人びとの宇宙への関心が高まりはじめたころである。月着陸をめざすアポロ計画を決定したケネディ大統領は、昭和三十八年の十一月、日米間の衛星中継による初のテレビ放送の日に暗殺され、その驚きはいまだに印象に残っている。つまり、そんな時代だったのである。
今、人類の宇宙進出や異星人を信じている子どもはどれだけいるのだろうか。